浅煎りのスペシャルティコーヒー豆をハリオV60でハンドドリップする際のポイントと具体的な手順を、バリスタや専門家のレシピを参考にまとめます。
浅煎り特有のフルーティーで繊細な味わいを最大限に引き出すために、適切なお湯の温度や挽き目、蒸らし方から注湯テクニックまで、再現性のある方法を詳しく解説します。
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浅煎りコーヒー豆とは【豆の特徴】

まずは浅煎り豆について、浅煎り豆がどんな特徴があるのか知ることで美味しく淹れる方法を探ります。探れるようになるでしょう。
浅煎りの魅力
浅煎りコーヒーの探求は、単なる味の好みを超えた、透明感、複雑性、そして産地が持つ本来の個性を追い求める旅です。それは、コーヒーを最も深く理解するための一つの頂点と言えるでしょう。焙煎士の技術と抽出者の技術が交わることで、その豆が持つテロワール、すなわち花のような香り、果実味、そして生き生きとした酸味といった個性が最大限に表現されます 1。この一杯は、コーヒーが単なる飲み物ではなく、芸術であり科学であることを証明します。
浅煎りの挑戦:抽出不足という壁
しかし、この輝きを引き出すには特有の課題が存在します。浅煎りの豆は、深煎りの豆に比べて物理的に硬く、密度が高いという特性を持っています 3。これは、豆の内部に含まれる風味成分が溶け出しにくい、つまり溶解性が低いことを意味します。この「抽出不足」に陥りやすい性質こそが、浅煎りコーヒーの抽出に特別なアプローチが不可欠である根本的な理由です。
Hario V60:完璧な抽出器具
この難題に挑む上で、Hario V60は単なる道具ではなく、理想的な抽出器具となります。その円錐形の形状、大きな一つ穴、そして螺旋状のリブ(突起)は、お湯の流れをほとんど妨げません 4。これにより、抽出者は湯温、注ぐ速度、撹拌といった変数を最大限にコントロールすることが可能になります 6。この自由度の高さこそが、浅煎り豆の「抽出不足」という壁を乗り越えるための積極的な抽出戦略を実行するために不可欠なのです。V60はあなたのためにコーヒーを淹れるのではなく、あなたがコーヒーを淹れるための力を最大限に引き出してくれるのです。
抽出理論の核心

これらの原理を理解することが、美味しく淹れるための鍵となります。
2.1 抽出の科学:酸味、甘味、苦味のダンス
コーヒーの風味成分は、それぞれ異なる速度で溶け出します。その抽出される順番は、一般的に「酸味」→「甘味」→「苦味」の順です。
- 抽出不足 (Under-extraction): 抽出時間が短すぎたり、抽出効率が低かったりすると、素早く溶け出す酸味成分しか抽出されず、味わいが薄く、ただ酸っぱいだけのカップになります 14。
- 理想的な抽出 (Ideal Extraction): 目指すべきは、重く苦い成分が支配的になる前に、十分な酸味と最大限の甘味成分を抽出した「スイートスポット」です。これにより、バランスが取れ、甘く、生き生きとした、心地よい後味が続く一杯が生まれます 18。
- 過抽出 (Over-extraction): 抽出時間が長すぎたり、抽出が過度に積極的だったりすると、苦味や渋味の成分を抽出しすぎてしまい、ざらつきがあり、口の中が乾くような不快なカップになります 18。
浅煎り豆を美味しく淹れる手順

お湯の温度:浅煎りに適した温度帯とその理由
浅煎りコーヒー豆を美味しく抽出するには、比較的高めのお湯の温度が推奨されます。一般的に90℃〜96℃程度の範囲が適温とされ、家庭では約90℃前後を目安にするとよいでしょう。
浅煎り豆は焙煎が浅いため豆内部の密度が高く、酸味やフルーティーな風味成分が多く残っています。そのため高めの温度のお湯でしっかり抽出することで、これら繊細な風味を引き出しやすくなります。
逆に温度が低すぎると十分に成分が溶け出さず味が平坦になりがちです。一方で沸騰直後の熱すぎるお湯(概ね96℃以上)は過抽出を招き、苦味や雑味を出してしまう恐れがあるため注意が必要です。実際のバリスタの例でも、浅煎りでは90〜92℃程度をひとつの目安にしつつ(深煎りなら83〜86℃程度)、家庭では毎回調整する手間を省くため浅煎りは90℃に設定しているという声があります。
温度計付きケトルを使うのが確実ですが、道具がない場合は一度沸騰させたお湯を細口ポットに移し1分半ほど放置すると約90℃になる、といった簡易な目安も紹介されています。このように適切な温度帯を守ることで、浅煎り豆の持つ明るい酸味や甘みをバランスよく抽出できるのです。
挽き目(グラインドサイズ):適切な粒度の目安
挽き目はコーヒーの味を左右する重要な変数です。浅煎り豆をV60で抽出する場合、中挽き〜中細挽き程度が基本の目安になります。具体的にはグラニュー糖や食塩粒くらいの大きさ、日本の例えでいえばザラメ糖に近い粒度をイメージすると良いでしょう。
あまりにも粗すぎるとスカスカと薄い味わいになりやすく、逆に細かすぎると過度に成分が出て雑味やザラつき(いがいがした舌触り)の原因になります。
浅煎りの場合、しっかり風味を出すためやや細かめ寄りの挽き目に設定するバリスタもいますが、まずは中細挽き程度から始めてみましょう。
例えば札幌のKOTARO COFFEEさんのレシピでは「中細挽き」を指定しており、一般的なミルでは中挽き表示より少し細かい設定にするイメージです。一方でレシピによっては浅煎りの透明感を狙って粗挽き(フレンチプレスに近い粒度)を採用するケースもあります。
このように挽き目を調整することで抽出のスピードや味の濃度感をコントロールできます。最適な抽出時間(後述の2〜3分程度)になるよう微調整し、粉っぽさや雑味を感じる場合は少し粗く、逆に味が薄いと感じる場合はやや細かく挽くなどして、自分の好みに合わせて調節すると良いでしょう。
蒸らし(ブルーミング)の時間とお湯の量
蒸らし(ブルーム)とは、挽いたコーヒー粉にお湯を注いでいきなり全量抽出を開始するのではなく、最初に少量のお湯で粉全体を均一に湿らせてガスを放出させる工程です。浅煎り豆でもこの蒸らしの工程は非常に重要で、しっかり蒸らすことで後の抽出でフレーバー豊かなコーヒーになります。
一般的な目安として、蒸らし時間は30〜45秒程度確保します。蒸らしのお湯の量はコーヒー粉が全体しっかり湿る程度が適量で、具体的には粉量の2倍〜3倍程度の重さのお湯を注ぎます。
たとえばコーヒー粉14gに対して約30〜45g前後のお湯を注ぐと粉全体が十分潤います。実際のレシピ例でも、「全湯量の20%(粉全体が浸る程度)のお湯を注ぐ」といった記述があり、豆14g・総湯量230gのレシピなら約40g、豆12g・総湯量200gのレシピでも初回は50gと、だいたい粉の重量の2〜3倍量が採用されています。
蒸らしではお湯を注いだらそのまま静置して待つのが基本ですが、浅煎りの場合軽く撹拌(かくはん)してやると均一に粉と湯が馴染み、ムラなく抽出が進みます。実際にKurasu京都のレシピでは、最初の注湯40gを10秒かけて注いだらティースプーンで2〜3回ゆっくりと攪拌することを勧めています。
これによって粉全体から良質な酸味を引き出すことができるとのことです。撹拌せず蒸らす場合でも、注ぎ終わりにドリッパーごと優しく揺すって全体を馴染ませる(スピンする)方法もあります。
ポイントは、蒸らしの段階でコーヒー粉を均一に湿らせ、粉内部に含まれる二酸化炭素ガスを逃がすことです。ガスが抜けて粉が落ち着くことで、この後の本抽出でお湯が粉全体に行き渡りやすくなり、雑味のないクリアな風味の土台ができます。
蒸らし時間が経過したら次の抽出ステップに移りましょう。
全体の注湯ステップ:何段階でどう注ぐか
蒸らし後の本抽出では、注湯を何回かに分けて段階的に行う方法が再現性も高くおすすめです。浅煎りのV60抽出では合計で3〜4投(蒸らしを含めて4〜5回注湯)するレシピが多く見られます。以下に具体的な注湯ステップの一例を示します。
- 1投目(蒸らし): 先述のとおり、粉全体が湿る程度の少量(粉の2〜3倍量)のお湯を注ぎ、約30〜45秒間蒸らします。注湯後、必要に応じてスプーンで軽く撹拌しつつ、香りが立つのを待ちます。
- 2投目: 蒸らし終了後(タイマーで約40秒経過時など)に、総湯量の半分程度までお湯を追加します。例えば総湯量200gに対してはこの段階で100g程度になるように注ぎます。この際の注湯は勢いよく円を描きながら注ぐのがポイントです。一気に注ぐことでコーヒー粉全体にお湯が行き渡り、浅煎り豆の持つ甘みをしっかり引き出すことができます。注ぎ終わったら再び少し待ち、サーバーを軽く揺すって粉と湯をなじませても良いでしょう。
- 3投目: 抽出開始から1分10秒前後になったら、さらにお湯を追加します。この段階では総湯量の約75%程度まで到達させるイメージです(例:総量200gなら150g程度まで)。2投目まででコーヒーの旨味成分の大半は出ていますので、3投目以降は味の濃度調整のフェーズになります。そのため、この3投目ではできるだけ優しくゆっくりと注湯し、不要な攪拌を避けます。お湯の流れは細くコントロールし、コーヒーベッドを乱さないように丁寧に注ぐと雑味の発生を抑えられます。
- 4投目(最終注湯): 抽出開始から約1分40秒頃、最後の注湯を行います。目標の総湯量まで残りのお湯を注ぎ切るイメージです。この最終注湯も基本的にはゆっくり丁寧に行いましょう。例えば浅煎り14g・総湯量200gのレシピでは、1投目40g→2投目60g→3投目50g→4投目50gという配分で合計200gに達します。最後のお湯を注ぎ終えたら、落ちきるまでドリッパーに触れずに待ちます。抽出完了直前にそっと一度だけスプーンでかき混ぜると、成分が均一になり毎回の味のブレが少なくなるという工夫も紹介されています。
上記はあくまで一例ですが、多くのプロのレシピで共通しているのは「蒸らし→数回に分けて注湯→落ちきり」という流れです。なお、世界的バリスタである粕谷哲氏の「4:6メソッド」では5回に分けて注湯し酸味と甘みのバランスを調整する手法が知られていますが、基本原理は同じく段階的抽出で味をコントロールする考え方です。
初心者の方はまず上記のようなシンプルな3〜4回注湯の手順から試し、慣れてきたらお湯の配分や回数を微調整して自分好みの味を探求するとよいでしょう。
トータルの抽出時間
浅煎りコーヒーをV60で抽出する場合、全体の抽出時間は約2分30秒〜3分を目安にしてください。この時間には蒸らしの時間も含みます。多くのハンドドリップレシピで「2分半〜3分」が理想的な抽出時間とされており、浅煎りの場合も同様です。
実際のレシピ例でも「注ぎ終わりから2分30秒で落ち切りが目安」や、「2:30〜3:00で抽出完了」といった記述が見られます。抽出時間が短すぎると十分な成分が出切らずに酸味ばかりが尖った味になったり薄味になったりしがちで、逆に長過ぎると渋み・苦味といった不要な成分まで抽出されてしまいます。
適正な時間内に抽出が終わらない場合は、挽き目や注ぐお湯の量・スピードを調整してみましょう(例えば想定より早く落ちてしまう場合は挽き目を細かくする、逆に時間がかかりすぎる場合は挽き目を少し粗くする、等)。浅煎りは抽出が難しいと言われますが、2分半前後で落ちきるようなレシピに合わせて調節すれば、風味のバランスがとれた一杯になりやすいです。
なお、抽出が終わったらドリッパーをサーバーから外し、サーバー内のコーヒーを軽く揺すってあげると層が均一化し味が安定します。あとはカップに注げば出来上がりです。
コーヒー豆とお湯の比率(レシオ)
コーヒー粉量とお湯量の比率(ブリューレシオ)は、濃度と味わいを決める基本変数です。一般的に1:15〜1:17(コーヒー1に対してお湯15〜17)の範囲が浅煎りハンドドリップでもよく使われます。
この比率の数字が小さい(お湯の量が少ない)ほどコーヒー液は濃くなり、数字が大きい(お湯が多い)ほど薄くなります。まずは1:15程度から試し、濃いと感じれば1:16〜17に薄め、物足りなければ1:14に近づける、といった具合に調整すると良いでしょう。
札幌のKOTARO COFFEE ROASTERでは「だいたい1対15が濃すぎず薄すぎずでオススメ」だが「個人的には16倍くらいの方が好き」と述べています。実際、14gの豆に対し230gのお湯(約1:16.4)で抽出するレシピを採用しています。京都のKurasuのレシピでは14gに対し200g(約1:14.3)とやや濃い比率でしたが、これは浅煎り豆のフレーバーをしっかり感じさせる狙いでしょう。
ニュージーランド発のFlatwhite Coffee Factoryの例では12gに対し200g(約1:16.7)と標準的な濃さです。このように1:15前後を基準に、豆の個性や好みに応じて微調整すると良い結果が得られます。浅煎りのフルーティーさを活かすには薄すぎても物足りず、濃すぎても酸味が強く出過ぎるため、ぜひ好みのレシオを見つけてみてください。
味わいを最大化する注湯の速度・リズム・コツ
ハリオV60ドリッパーの特徴である円すい形と大きな単一の穴により、お湯の注ぐスピードやリズムがコーヒーの味に影響を与えます。浅煎りコーヒーの繊細な味わいを最大限引き出すため、以下の注湯テクニックやコツに留意しましょう。
- 注湯の速度:
基本的には一投あたり約10秒前後で所定の湯量を注ぐペースが目安です。例えば40gを10秒で注ぐ場合、約4g/秒の中程度の細さの流れになります。あまりにチビチビと遅く注ぐと抽出が進みすぎて雑味が出やすくなる一方、勢い良く注ぎすぎると粉が攪拌されすぎて不均一な抽出になりかねません。安定した細めの注ぎ口から細く途切れない水流で10秒程度かけて注ぐことで、毎回安定した味になりやすいです。各プロのレシピでも「毎回10秒かけて注ぐ」、「1投あたり約10秒で淹れる」といった記述が見られ、注湯スピードを一定に保つことが再現性向上につながるとされています。 - 注ぐ範囲とリズム:
V60では粉全体に均一にお湯を行き渡らせるために、円を描くように中心から外側へゆっくり移動しながら注ぐのが基本です。特に2投目(蒸らし後最初の注湯)ではドリッパー内のコーヒー粉全体を巻き込むように勢いよく注ぐことで、粉の層が動いてチャネル(お湯の抜け道)を防ぎ、甘みの抽出を助けます。一方で終盤の注湯ではできるだけ静かに一点に注ぐようなイメージで、粉床を乱さないことが雑味を抑えるコツです。この緩急のつけ方によって、浅煎りの酸味・甘みのバランスがより良く引き出せます。なお、ペーパーの縁やドリッパーの壁面に直接お湯を当てないようにするのもポイントです。壁伝いにお湯が落ちてしまうとコーヒー層を十分通らず薄い部分ができてしまうため、常に粉の上にお湯を落とすよう心がけます。 - 攪拌とスピンの活用:
抽出中にスプーンでかき混ぜたり、ドリッパーごと揺する(スピンする)動作は抽出を均一化するために有効です。浅煎りのレシピでは、蒸らし後に軽く全体を攪拌することで酸味をしっかり出し、最後の抽出後にもひと混ぜして毎回の味のブレを減らすなど、要所での攪拌が取り入れられています。過度に混ぜすぎると過抽出の原因にもなるため加減が大事ですが、適度な攪拌は粉とお湯の接触を均一にし、浅煎り特有のクリアな風味を引き出す助けになります。特に最初の蒸らしと最後の仕上げでのひと混ぜは簡単に実践できるコツです。 - その他のコツ:
注湯中はお湯の量(ドリッパー内の水位)を極端に上下させないようにする、抽出中は可能な限り連続して注ぎ断続的にならないようにする、といった点も味の安定につながります。また、お湯を注ぐ際はポットの注ぎ口をコーヒー粉に近づけすぎないようにしましょう。近すぎると勢いが強くなりすぎ粉が舞ってしまうことがあります。適度な高さ(数センチ程度)から細く注ぐことでコントロールしやすくなります。以上のようなリズムとテクニックを守ることで、浅煎り豆の風味が最大限に引き出された一杯に近づけることができます。
フィルターの種類と準備方法のコツ
ハリオV60で浅煎りコーヒーを淹れる際、使用するペーパーフィルターにも注意を払いましょう。V60専用の円すい型ペーパーフィルター(サイズは使用ドリッパーに合わせて01か02)を使いますが、できれば白色の漂白済みフィルターを使うことをおすすめします。未漂白の茶色いフィルターは紙臭さが残りやすいため、繊細な浅煎りの香りに影響を与えやすいからです。
いずれにせよ抽出前にはペーパーをリンス(湯通し)することが重要です。ドリッパーにフィルターをセットしたら、抽出に使うお湯とは別に熱湯でフィルター全体を十分に濡らし、お湯をサーバーに通して捨てます。これにより紙の匂いがコーヒーに移るのを防ぐことができます。
浅煎りコーヒーは特に香りが繊細なので、このリンス工程をしっかり行うことが大切だと専門家も強調しています。加えてリンスのお湯でサーバーやドリッパー自体を温めておく効果もあり、抽出中の温度低下を防ぐことができます。器具が冷えているとせっかく適温で沸かしたお湯が抽出途中で温度低下し、十分な抽出ができなくなる恐れがあるためです。
フィルターのセット時には、折り目(接着部)を折り返してドリッパーに密着させ、しっかり密着していることを確認しましょう。リンス後はサーバー内のお湯を必ず捨て、フィルターがずれていないか確認してからコーヒー粉を投入します。これで抽出の下準備は完了です。
浅煎り豆を美味しく淹れる方法まとめ

上記の内容をわかりやすくまとめたものです。
1. 基本のレシピ(目安)
- 豆とお湯の比率:1:15〜1:16
(例:豆14gに対してお湯210〜230g) - 挽き目:中細挽き(ザラメ砂糖〜食塩程度)
- お湯の温度:90〜92℃(浅煎りは高めが◎)
- 抽出時間:2分30秒〜3分(蒸らし込み)
2. 抽出の流れ(ステップごと)
STEP 1:器具の準備
- ペーパーフィルターをセットし、お湯でリンス(紙の匂い除去&器具を温める)。
- コーヒー粉を入れ、ドリッパーを軽く揺すって平らに整える。
STEP 2:蒸らし(ブルーミング)
- 粉の 2〜3倍のお湯(例:14gなら40g前後)を、10秒ほどかけて全体に注ぐ。
- 30〜45秒そのまま待ち、粉がふっくら膨らむのを楽しむ。
- 軽くスプーンでひと混ぜ or ドリッパーを揺すって均一にするのも効果的。
STEP 3:2投目
- タイマーが40秒を過ぎたら、全体の半量まで注湯(例:合計100g)。
- このときはやや勢いよく、粉全体を巻き込むように円を描きながら注ぐ。
- 狙いは「甘みの抽出」。
STEP 4:3投目
- 抽出開始から1分10秒前後、合計の75%程度まで注ぐ(例:150g)。
- 今度はできるだけ静かに、細くゆっくり注ぐ。
- 狙いは「雑味を抑えて透明感を出す」。
STEP 5:4投目(仕上げ)
- 抽出1分40秒ごろ、目標の総湯量まで(例:200〜230g)。
- 同じく静かに、落ち着いたリズムで注ぐ。
- 落ち切りは 2分30秒〜3分を目安に。
3. 美味しく仕上げるコツ
- 注ぐスピード:1投ごとに約10秒。一定のリズムを意識。
- 注ぐ位置:粉の中心から円を描く。ペーパーの壁面に直接当てない。
- 攪拌の工夫:蒸らし直後や最後に軽く混ぜると、味が均一になりやすい。
- 抽出後:サーバーを軽くスワirl(揺する)して全体を均一にしてからカップへ。
4. 浅煎り豆ならではの楽しみ方
- 温かいうちはフルーティな酸味と華やかな香りを。
- 少し冷めてくると甘みや透明感が際立ち、また違う顔を見せてくれます。
淹れてみての感想
私が使用したレシピです。
- 豆とお湯の比率:1:15
(豆16g=総湯量240g) - 挽き目:TIME MORE C3MAX PRO(16クリック)
- お湯の温度:90℃
- 抽出時間:3分
これまで私は浅煎り豆をなかなか美味しく淹れられず、ずっと悩んでいました。特にウォッシュドの豆は酸味が強く出すぎてしまい、どうしても納得のいく一杯にならなかったのです。
ところが、今回ご紹介した淹れ方で試してみたところ、驚くほどバランス良く仕上がりました。これまで感じにくかった甘みがしっかりと出てくるようになり、浅煎りの魅力をより楽しめるようになったのです。
特にウォッシュドの豆でその効果を強く実感しています。一方で、ナチュラルの豆は比較的どんなレシピでも美味しくなりやすい傾向がありますが、ウォッシュドは繊細で抽出の違いが出やすいのだと改めて感じました。
今回のレシピに出会えたことで、浅煎り豆、とりわけウォッシュドの楽しみ方が大きく広がったように思います。
世界一のレシピ集

浅煎りコーヒーの抽出に対する3つの異なる、しかし世界レベルで証明された哲学を、具体的なレシピとして紹介します。これらは厳格なルールではなく、あなたの抽出技術を新たな高みへと導くための指針です。
粕谷哲氏の「4:6メソッド」— 味をデザインする
哲学
2016年のワールド・ブリューワーズ・カップ王者である粕谷哲氏によって考案されたこのメソッドは、比較的「粗挽き」の豆を使い、総湯量を40%と60%のフェーズに分割することで最終的な味のプロファイルをコントロールする、非常に論理的で再現性の高いシステムです 13。
「40%」フェーズ(味の調整)
最初の40%のお湯(2回に分けて注ぐ)が、甘さと酸味のバランスを決定します。1投目と2投目の湯量の比率を変えることで、カップの味わいを「より甘く」したり、「より明るく(酸味が強く)」したりと、意図的にコントロールできます 13。
「60%」フェーズ(濃度の調整)
残りの60%のお湯は、抽出の濃度(濃さ)を調整します。このフェーズをより多くの回数に分けて注ぐ(例:60gを3回)と、少ない回数で注ぐ(例:90gを2回)よりも濃い味わいのカップになります 13。
詳細レシピ
- コーヒー粉: 20g
- 挽き目: 中粗挽き〜粗挽き 13
- お湯: 総量300g(比率1:15)、温度93℃ 13
- 0分00秒: 1投目(甘味重視なら50g、酸味重視なら70gなど)
- 0分45秒: 2投目(合計湯量が120g、つまり40%になるように注ぐ)
- 1分30秒: 3投目(180gまで)
- 2分15秒: 4投目(240gまで)
- 3分00秒: 5投目(300gまで)
- 目標完了時間: 3分30秒でドリッパーを外す 20
ジェームス・ホフマン氏の「究極のV60テクニック」— 抽出効率の最大化
哲学
影響力のあるコーヒー専門家であり著作家でもあるジェームス・ホフマン氏のこのメソッドは、可能な限り高く、均一な抽出を目指します。それを実現するために、より細かい挽き目、沸騰したお湯、そしてチャネリング(お湯の偏った流れ)を防ぎ、全てのコーヒー粉が均等に抽出に貢献するための特殊な撹拌技術を用います 21。
主要なテクニック
- ウェル(窪み): 蒸らしの前にコーヒー粉の中央に指で小さな窪みを作ることで、最初から全ての粉が均一にお湯に触れることを助けます 36。
- ブルーム・スワール: 蒸らしのお湯を注いだ直後にドリッパーを力強く揺らすことで、乾いた粉の塊をなくし、均一な抽出のための土台を築きます 21。
- 最後の攪拌とスワール: 抽出の最後にスプーンで優しく攪拌し、さらにドリッパーを揺らすことで、コーヒーベッドを平らな層に整えます。これにより、お湯がドリッパーの壁際を素通りするのを防ぎ、抽出の最終段階が均一に行われ、部分的な過抽出や抽出不足を防ぎます 29。
詳細レシピ
- コーヒー粉: 15g
- 挽き目: 中細挽き 21
- お湯: 総量250g(比率1:16.67)、浅煎りの場合は100℃(沸騰直後) 21
- 0分00秒: 30-45gのお湯で蒸らし。直後にドリッパーを力強く揺らす。
- 0分45秒: 1回の連続した注ぎを開始。1分15秒までに総湯量の60%にあたる150gまで注ぐ。
- 1分15秒: さらに優しく注ぎ続け、1分45秒までに最終湯量の250gに到達する。
- 1分45秒: スプーンで時計回りに1回、反時計回りに1回優しく攪拌。少しお湯が落ちるのを待ってから、最後に優しくドリッパーを揺らし、粉の層を平らにする。
- 目標完了時間: おおよそ3分00秒〜3分30秒 32
「ノルディックスタイル」— 透明感と甘さの追求
哲学
ティム・ウェンデルボーのような焙煎士に代表されるこのアプローチは、非常に焙煎の浅い「ノルディックスタイル」のコーヒー豆のために設計されています。これらの豆は極めて密度が高く、その甘さと複雑性を解き放つためには、非常に高いレベルの抽出に耐え、またそれを必要とします。このメソッドは、高温や長い抽出時間を恐れません 39。
中核となる原則
抽出を積極的に、しかし優しく行うことが核心です。非常に熱いお湯と比較的細かい挽き目を使用します。鍵となるのは、注ぎによる過度な撹拌を避け、穏やかで一貫した注ぎを維持することです。熱と時間が作用することで、驚くほど香り高く、甘く、そして格別にクリーンなカップが生まれます。
詳細レシピ
- コーヒー粉: 15g
- 挽き目: 中細挽き
- お湯: 総量250g(比率1:16.67)、温度98-100℃ 7
- 0分00秒: 50gのお湯で蒸らし。スプーンで優しく攪拌し、全ての粉を濡らしても良い 41。45秒待つ。
- 0分45秒: ゆっくりと、穏やかな円を描くように連続して注ぎ始める。1分45秒から2分00秒を目安に、最終湯量の250gまで注ぎ切る。注ぎによる撹拌を最小限にするため、ケトルの注ぎ口はコーヒーベッドに近づけておく 39。
- 2分00秒: 全てのお湯が落ち切るのを待つ。総抽出時間が3分30秒、あるいは4分以上に及んでも心配は不要です。このような高密度な豆の場合、この長い接触時間こそが甘さを引き出すために必要不可欠なのです 39。
「最高のレシピ」というものは存在しません。むしろ、これらの3つのレシピは、浅煎り豆から高い抽出率を達成するための異なる制御哲学のスペクトラムを表しています。粕谷氏は粗挽きと「湯量の分割」で、ホフマン氏は細挽きと「高いエネルギーと撹拌」で、ノルディックスタイルは細挽きと「高い熱と長い時間」で、それぞれ同じゴールを目指します。この違いを理解することが、あらゆる豆に対応できる応用力を身につける鍵となります。
自分の目と舌を養う

レシピの指示に従う段階から、あなた自身の結果を診断し、改善していくための力を養う段階へと移行します。
トラブルシューティングガイド(上手く味が出ないときの対処法)
コーヒーをテイスティングし、一般的な欠点を特定するための体系的なガイドを提供します。目標は、「この味は好きではない」という感想から、「このコーヒーは酸味が強い。つまり抽出不足の可能性が高い」という分析的思考へ移行することです。
以下のトラブルシューティング表は、あなたの家庭での抽出における不可欠なリファレンスとなるでしょう。
味の欠点 | 考えられる原因 | 主な解決策 | 副次的な調整 |
酸っぱい、草っぽい、甘さが足りない | 抽出不足 | 挽き目を細かくする | 湯温を上げる。蒸らし時間を長くする。ゆっくり注ぎ接触時間を延ばす。穏やかな撹拌(スワール)を加える。 |
苦い、渋い、口が乾く | 過抽出 | 挽き目を粗くする | 湯温を下げる。優しく注ぎ撹拌を減らす。速く注ぎ総抽出時間を短くする。 |
空虚、弱い、水っぽい | 粉量が少ない、またはチャネリング | 粉量を増やす、または注ぎ方を改善 | 蒸らし時に均一に濡らす(スワール)。制御された同心円で注ぐ。最後に粉の層が平らになるようにする。 |
酸味と苦味が同時に存在する | 不均一な抽出 | グラインダーの質と注ぎ方を改善 | 撹拌(スワール/攪拌)で均一性を促す。湯温を安定させる。粉を均一に распредеする技術を用いる。 |
この表は、失敗の瞬間を学びの機会へと変えるためのツールです。
まず、カップに感じた不快な味を言葉で表現します。次に、その感覚を科学的な概念(例:抽出不足)と結びつけます。そして、最も効果的な解決策(挽き目の調整)を筆頭に、具体的な行動計画を提供します。
これにより、コーヒーの「ダイアルイン(味の調整)」という、バリスタの核となるスキルを体系的に習得することができます。
味覚の調整:自分だけの一杯へ
実験と調整のためのフレームワーク。最も重要な原則は、「一度に変更する変数は一つだけ」ということです。
以下に、典型的な「ダイアルイン」のプロセスを示します。
- まず、第三部で紹介したレシピの一つを基準点として選びます。
- 一杯淹れて、トラブルシューティングガイドの言葉を使いながら注意深く味わいます。
- 少し酸味が強いと感じましたか? 次の抽出では、ただ一つだけ変数を変更します。例えば、グラインダーの挽き目を一段階細かくします。
- もう一度淹れます。甘味は増しましたか? バランスは良くなりましたか? それとも、行き過ぎて苦味が出てしまいましたか?
- このように、挽き目、湯温、比率といった変数を一度に一つずつ系統立てて調整していくことで、あなたはそのコーヒー豆に対する各変数の具体的な影響を学び、自分の目指す味わいを実現するための直感的な感覚を養うことができるでしょう 7。
終わりなき探求の始まり
コーヒーに「これさえあれば完璧」という万能レシピはありません。むしろ面白いのは、その日の抽出やテイスティングを重ねながら、少しずつ調整していく過程そのものだと思います。
新しい豆に出会うたびに、「今日はどんな風に淹れたら良さが出るかな?」と試すのはまるでパズルを解くようで、毎回新しい発見があります。
今回紹介したレシピもゴールではなく、むしろスタートライン。ここから先は、あなた自身が自分のコーヒーの旅を進めていくためのヒントであり、コンパスのような存在になれば嬉しいです。
\ 色々な豆が試せます/
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